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ハイブランドの企業イベントを中心に“DJ・Kaopang”として、またモデルとしても活躍する坂井香さん。ピアノで音大に進み、そのままピアノの先生になるはずだった彼女がなぜDJという道を選んだのか、そのきっかけや将来の夢を聞いた。
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ピアノの先生になるのかな〜と漠然と思いながら音大に進学。在学中はメカ系がもともと好きだったこともあって、趣味で珍しいヘッドホンを集めてブログに書いたりもしていたんですけど、それがたまたまオーディオ業界の人の目に留まって。そこから『ヘッドホン365』っていう毎日1個ずつヘッドホンを紹介する企画をさせてもらうなど、オーディオ雑誌で仕事をするようになりました。当時は“元祖ヘッドホン女子”って言われたり(笑)。
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初めてクラブに行ったのは仕事で知り合ったラジオDJさんに誘われて。それまでチャラいってイメージしかなかったんですけど、テクノ系のクラブで音に触れた瞬間、とにかく衝撃が走ったんです。ピアノのクラシックな世界とは真逆の世界。まさに「パンチ食らった!」という感覚でした。今までの自分の中には無い音楽だったんです。

私にとって音楽は“見るもの”ではなく“やるもの”なので、すぐに「フロアで踊るのではなくDJブースに行きたい!」って思いました。どうやって始めたらいいかを聞いたら「いきなり機材を揃えるのはお金がかかるから、スマホのアプリでやったらいいよ」と言われて。それがスタートですね。
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ヘッドホン女子として活動していた音大生時代
始めた頃はDJを仕事にしようとは思っていませんでした。「このままオーディオの仕事を続けていくのかな?」「実家も東京だしなんとかなるかな?」って、あまり焦りもなくて。ところが卒業間際になって突然親が「家を売ってセカンドライフを始める」って神戸に移住してしまったんです!それまではわりと厳しい家だったんですけど、急に世に放たれたって感じ。そこからサバイバル生活が始まりました。祖父の家を使っていいと言われたんですが、築50年のボロボロの一軒家で、ネズミも出るようなところでピアノも無い!それで逆に「DJをやるしかない」って火がついた部分はありました(笑)。
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最初の頃はとにかくいろんなクラブを巡りました。スーツケースにちょっとしたお泊りセットを詰めて、お酒も飲めないのに毎日朝まで。多いときには1日5軒ハシゴして営業していました。体張ってましたね(笑)。そのうちに「無料でよければうちで演ってもいいよ」って言ってもらえるようになって、それが結構評判良くて。音大のルーツがあるからなのか、「なんか変わってる」って言ってもらえて。

でも1晩で例えば5千円、お客さんを10人連れてきたらプラス料金って感じだったので、ギャラのあるイベントに出られるようになっても財政的には厳しかったです。
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24歳のときにやっぱり不安定すぎるなって思って、昼に事務の仕事も始めました。コピーを取ったりお茶汲みをしたり。その頃は祖父の家も取り壊しになっていたので、とにかく安定したかったんです。ただその事務の仕事でたまたま音楽業界の人に出会って、不思議なご縁もあって「DJ活動を応援したい」って、企業の仕事を紹介してもらえたんです。

そのうちに友人づてにゲランなどブランドのパーティのDJからも声が掛かって。すごく嬉しかったですね。ギャラの桁が違うので、生活が安定してきて事務の仕事は1年で辞めることができました。
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[左上]クラブ巡りをしていた頃 [右上]ルミネ新宿 屋上BBQ(2012) [下]GUERLAIN KISSKISS ROSELIP(2015)
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自分の強みは「DJっぽくない見た目」。DJって言うと夜のクラブっていうイメージありますよね?私も始めは形から入ろうって思って気合いを入れて刈り上げにしていたんです(笑)。でもなんか違うなって思って、自分は自分らしく、ナチュラル志向で行こうって決めました。夜のダークなイメージではなく、「音楽=Happy!」なイメージで行こうって。

海外だとホテルやレストランには普通にDJブースがあって、BGMに花を添えるイメージなんです。それが日本でももっと広まってほしくて。だから今はクラブにも行くことはなくなったし、夜は寝る!意識的にそうしています。
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そのおかげでハイブランドのパーティで使ってもらえたり、あとはラグビーの試合会場でDJをしたんですけど、それは「元気で爽やかな感じだから」ってことでオファーが来たりしたんですよ。そんなときは「よし!マーケティングうまくいった!」って嬉しくなりますね。

今後はDJをしながらピアノを弾きたいです。海外には既にいるんですけど、それがすごくカッコよくて。いつか私も唯一無二の自分の形を作りたいと思っています。
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World Rugby Women’s Sevens World Series(2018)
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DJの仕事は現場でのプレイの他に自宅作業も多いんです。選曲だけでなくミックスを作るとか、映像に音を合わせるとか。曲も見つからないときは100曲聞いてやっと1曲ってときもある。イベントの前日は落ち着かなくて眠れなかったりもします。基本的に一人なので悩んだ時に相談できる人がいないっていうのは大きいですね。心がポキって折れそうな時は結構あります。そんなときも頑張れるのは、猫のおかげかな。最初はDJを始めた頃に寂しくて拾ってきたんですが、寂しさと比例して増えて今は4匹います(笑)。
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仕事の依頼はイベント会社を通じて直接がほとんどです。今は幸い営業活動をしなくてもなんとか回っている状況ですが、仕事を振ってもらえなくなったら終わり。ホームページや名刺を作って営業しなきゃとは思っているものの、今はそこまで手が回らない状態です。インスタの活用も苦手。アイコンも猫で、ご指摘をいただいてようやく自分の顔写真にしたくらい(笑)。

モデルで雑誌に出ていると企業からの信頼に繋がるという思いもあって、友人の関わるモデル事務所にも所属したんですけど、まだあまり稼働はできていないですね。うまくできたらいいなって思ってはいます。
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ROGER DUBUIS × Lamborghini Excalibur Aventador S at Lamborghini大阪(2018)
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DJとしてはもう一皮剥けたいと思っています。女性DJとして一番に名前が挙がるようになりたいとか、ラグビーのワールドカップ会場でプレイしたいとか、世界的に有名になりたいとか。

一方で実は今、アパレルブランドを立ち上げることがもうひとつの目標です。服を作っているフリーデザイナーの友だちとお互いの悩みを話しているときに、「安心して寝たいよね」って話になって、「じゃあ自分たちでHappyな気持ちになれるパジャマを作ろう!」って。もう法人は立ち上げていて、今はお互い忙しくて完全放置状態の赤字なのですが、そろそろ本格稼働させたいなって思っています。
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今は「女性活躍社会」って言われているけれど、本当の意味ではまだまだこれから。私自身、仕事をする上で辛い思いをしたこともありますし、生理もあるし、まだ不利になることや不安も多いなって思うんです。将来は本当の意味で女性が活躍できる社会になってほしい。そしてそんな女性たちを応援できるようなブランドに育てていきたいです。
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坂井 香

KA0RI SAKAI
1990年東京都生まれ・在住。3歳からピアノを始める。音大在学時からモデルとして活動。2014年ミスワールドジャパン審査員特別賞。ヘッドホン女子としてオーディオ雑誌などにレビューの執筆等も行う。現在はDJ・Kaopang (カオパン)名義でDJとして活動する傍ら、アパレル会社の起業などさらに活躍の場を広げている。
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テキスト:小田真穂  フォト:雨森希紀(Maran.Don)
デザイン:前田佳保里 編集:丸山央里絵