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“おいしい旅”をコンセプトに、オーダーメイドの旅行を企画手配し、素敵な体験と思い出を生み出し続けるトラベルデザイナー・岡田奈穂子さん。旅行業への転身の理由や、起業のきっかけ、叶えたい夢を語ってもらった。
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私は旅好きだったけど人並みで、バイトばかりしている普通の大学生でした。就職活動では、旅行会社から内定はもらったものの就労条件を比較して、カタログ通販の会社に入社。海外雑貨の輸入や企画が主な仕事でした。

6年間働く中で、旅行ガイドブック『ことりっぷ』とのタイアップを企画し、旅行グッズを扱うブランドを立ち上げたことも。好きなことを伸ばしてくれる本当にいい会社でした。
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仕事柄、海外に行く機会が多くなり、ローカルな食べ物を食べたり、ガイドブックに載っていない場所に行ったりするのがすごく楽しくて。「その土地の良さを雑貨を通して伝えたい!」って、一生懸命でした。雑貨にまつわる物語や土地のエピソードを書いたカードを添えたりして。だけど、カードなんてすぐ捨てちゃいますよね。その頃から物を通じて伝えることに限界を感じ始め、実際に行って見て触れてもらうことに携わりたくなってきました。
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また一方、当時ツアー旅行主流の時代に自己手配で旅行をしていたら「そんな旅がしたい!ツアーを作って」と友達に頼まれたんです。遊び感覚で工程表を作り、飛行機や列車、レストランもおすすめを予約、お金はもらわず「おみやげにワイン買ってきてなー」って。

でも友人間でクチコミが広がって年に10件、20件とその数が増えてきて。大事な留学旅行や、ハネムーンの手配をしているうちに怖くなってきたんです。
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何の資格もスキルもないのに旅行手配して、現地でなにかあったときに責任がとれない。どうせやるんだったら、素人仕事ではなくクオリティ高くやりたい。通販会社ではいろんな仕事をさせてもらって楽しかったけれど、きっと私がいなくなっても誰かが仕事を引き継いでくれる。でも旅行はこんなに求められているということは、世の中にあまりないのかも。そのときこれを仕事にしようと決めました。
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私がやりたかったフルオーダーメイドの旅行を「うちでやったらいいよ」と言っていただけたので、小さな旅行会社に転職しました。お給料は半分に。そして転職前から勉強していた旅行業務取扱管理者の資格とワインエキスパートの資格を取得しました。

ただ実際に入社してみると案内先がマージンの入る提携店に限られているなど内容がかなり違っていて。本当に作りたい旅行を作るために独立を考えた時、お客さんを取られると勘違いされ、かなり辛い目にも遭いました。外出禁止になったり、ある日椅子の背もたれがなくなっていたり(笑)。辞めたときは心身ともボロボロだったけど、旅行業界のイロハを教えてもらい、今では感謝しかありません。
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予想外の退職だったので、とりあえず働かなくちゃ!って旅行業の登録申請をしました。いつかのために旅行業の登録に必要な600万円は用意していたんです。1週間で認可が取れて営業が開始できるようになったので慌てて名刺を作りに行きました。会社の売り上げはコーディネーター料のみ、シンプルです。
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独立を考え出したときまずは大阪の梅田にある、起業家支援の「スタートアップカフェ大阪」に通い始めました。会社のターゲットやコンセプトなどへアドバイスをもらい、自分の頭の中にあった、“食をメインにした旅”のスタイルが明確に。

そして旅行業の登録ができて仕事を開始した途端、今まで無料で旅行手配をしてあげていた友達がみんな広告塔になってくれました。結果、最初はバイトでもしながらと思っていたけど、月に3〜4件ほどリピーターさんがいる状態でスタートすることができたんです。
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楽しい旅行を作るために、ちゃんと利益ある事業として整える。それがこの1年半でした。ターニングポイントになったのは2018年1月に開催された女性起業家コンテスト「LED関西」。500人の前でビジネスプランを発表したところ、19企業から支援の手が挙がったんです。仕入れ先の紹介やサイトのシステム構築など足りないものをサポートいただき、コネクションがすごく増えて、自分のビジネスを知ってもらう機会が増えました。

4月には法人化。梅田のコワーキングスペースで仕事をしています。
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私の原動力は、会社を大きくすることではないです。「利益重視ではなく、純粋に楽しい旅行を作りたい」という思いがいつも頭の中にあって。代理店を通さずダイレクトブッキングして手数料を取らないためにはこの資格が必要、航空券を仕入れるのに必要なコネクションは何、安全のため保険はどこと提携したらいいのか……など必要なものを必死でかき集めている、そんな感じです。
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フルオーダーメイドの旅は、お客様に3~4回会ってプランニングするんです。最初に会ったときに、私服のファッションから提案の合いそうなホテルなどをまずイメージし、希望を聞いてざっくりした日程表を作り、それを基に次の打ち合わせではどんな体験をしたいか詳しく聞いて中身を充実させていきます。

空港の案内、周辺のおすすめスポット、地下鉄MAPと乗り方、レストランのバウチャーとメニューの日本語訳……できあがったしおりは内容ぎっしり!一般的な「旅のしおり」は2~3枚だけど、うちの場合は分厚い本くらいあります。現地でお客さまが楽しいこと、したいことだけを考えられるようにアテンドしてます。おせっかいなほど旅への愛が詰まり過ぎているんです(笑)。
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今は新しく日本国内のおいしい旅の企画も考えているんです。ヨーロッパにはシャンブル・ドットに代表されるゲストハウス文化があるけれど、日本にはその文化がまだなくて。ローカルの食を味わえる宿を、選んで予約できるサイトを作れないかなって。
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例えば隣県に1泊2日で行って、養鶏小屋のあるお宿に泊まって朝ごはんに採れたての卵かけごはんを食べたり、家族で野菜の収穫体験をして野菜嫌いな子どもが食べられるようになったり。
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この新しいチャレンジが、ちゃんと事業として成り立つのかの責任は全て自分にあります。自分の言動の今日明日の積み重なりが未来を作って行くので、いつも不安が心の半分を占めています。その不安を消すために、動いて話して手を動かして、っていう感じ。だけど、素晴らしい出会いをくれる旅が本当に大好きなんです。これからも一人一人に合わせて、ずっと思い出に残る旅を作っていきたいです。
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岡田奈穂子

NAHOKO OKADA
1988年奈良県生まれ・大阪府在住。株式会社Table a Cloth代表取締役/トラベルデザイナー。ヨーロッパやアジア諸国からの雑貨バイヤー・輸入業の仕事を経て、現地の人や文化に実際に目で見て触れてもらいたいと旅行業へ転身。第4回「LED関西」ファイナリスト、第17回「女性起業家大賞 奨励賞」受賞。
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テキスト:竹本紗梨  フォト:雨森希紀(Maran.Don)
デザイン:前田佳保里 編集:丸山央里絵