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右手の人差し指だけでスマホで描いたイラストがインスタグラムで注目を集め、フォロワーは約1万5千人。芸能人にもファンが多いイラストレーター・南 夏希さん。旅行業界から転身して3年で、仕事の幅を大きく広げている彼女にその秘密を聞いた。
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「仕事はとりあえず3年!」って。大学の文学部を卒業して、クリエイティブな仕事がしたいと思い、旅行会社に就職しました。法人営業は大変だったけど楽しかったですね。周りも旅行好きで面白い人ばかりで。「仕事は自分で取ってくるもの」って学べたのが何より良かった。ただ会社員時代は忙しく、絵はほとんど描いてなかったんです。
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大学に入って就職して…と25歳までは一般的な進路を歩み、30歳頃には結婚すると思っていて。30歳までは“残された自分の時間”だと。「あと5年、自分のために使わなきゃ!好きなことやらなきゃ!」と思って会社を辞めました。

退職前の迷っていた時期には久米島へ一人旅して、ずっと風景画を描いていましたね。浜辺に座って、さざ波を聞きながら「海の青と空の青はこういうふうに違うのか」なんて。
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そして退職後はデザイン的なことがしたいなってぼんやり考えてIllustratorとPhotoshopを学ぼうと、アートスクールに通うことにしたんです。地元の奈良から大阪のスクールに通い、片道1時間かかるので、電車内ではスマホでイラストを描き始めました。

それをせっかくだからと自分のインスタアカウントにアップ。そのうち数も増えたので、イラスト専用アカウントを作って、そちらにアップするように。友人がなんとなく見るのではなく、イラストを見たい人が見てくれるアカウントなのでアップするのも気が楽になって、ハッシュタグをいろいろ付けて、興味がある人が見つけやすいように工夫するようにもなりました。
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最初のお仕事は、突然のことでした。その頃のアルバイト先のコーヒー店でお店のグッズ制作に関わっていたんですね。缶バッチにイラストを描いて。それを見た雑誌『LaLaBegin』の編集さんが私を探してくれて、インスタに辿り着いて連絡をくれたんです。めちゃくちゃ嬉しかったですよー! それがアートスクールを終了する1カ月前のことです。
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イラストの仕事が入るようになって、アルバイトを辞めました。そして奈良から上京。東京に来た第一目標は、繋がりを増やすことです。これまでお仕事もらった人にあいさつをしたり、出版社にポートフォリオを持って行ったりしました。

人と繋がりたいので仕事で接した人にも、この人好きだなーって思ったら瞳孔でアピールするんです。大学の心理学の授業で、瞳孔が開いているのは、興味があって興奮している状態と聞いて。それを応用して「私、人間として好きですよ」って目線を送るんです。ぐっと前のめりで(笑)。あとは日頃から好きだと思うものは誰にでもきちんと言うようにしています。「うれしい、楽しい、大好き」は大切!
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今は事務所と業務委託の契約をしています。前にやったノベルティのお仕事の繋がりで声を掛けてもらいました。なんだか面白そうだし、自分じゃ繋がらないところに繋がりそうだなって。

お昼の12時から夕方5時までは事務所で、夜は場所を移しカフェで仕事をすることが多いです。家だと怠けちゃうので事務所の方が仕事できますね。事務所から声が掛かる前は、渋谷のコワーキングスペースを使おうと思ってました。毎日人が多いところに出かけられるし。活力をもらえる。やっぱり人が好きなんです。
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絵だけで食べていくことを目指してはなかったです。足りなかったらバイトすればいい。東京ならいくらでも仕事はある。私どこでもやっていける。えいやっ!て上京しました。

今考えているのは、イラストレーターは安定している仕事じゃない、いつ仕事が急減するか分からない。そのために「1年間何もしなくてもいいお金は持っておこう」ということですね。心の余裕のために貯金しています。まだ1年分は貯まってないけれど、想像していた“毎日モヤシ、栄養はブロッコリー頼り”みたいな生活じゃなく済んでいます(笑)。
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ギャラが思ったより少なくても、次の何かに繋がり、「私この仕事やりました」って言える内容だったら引き受けるようにしています。ただ、一度は価格交渉します。後悔はしたくないので。金額の話をして「じゃあ今回はいいです」って言われたことは今のところないです。

交渉できるようになったのは、参考にしてもらえるお仕事ができるようになってきたから。「このお仕事でこのぐらい頂いたんです」って言えるようになりました。
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コンセプトは降りてきたんですよ!イラストレーターとして売り出すって決めたときに、一貫したコンセプトがいるなって思ったんです。イラストのジャンルを自分の中で決めて描こうって。そうしたら家の居間で突然降りてきた。「目で見るハッピー」これだわ!って。ちょっとダサいとこがいい。ハッピーはカタカナです。儚さやアンニュイさは要らない、見て幸せになる、心地いいだけの絵でいいと思っています。
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あと締め切りはきっちり守ります! 締め切りより1日前に提出するのを心掛けています。「その日に提出できるけど本当にギリギリになるな」というときは「今本当にスケジュールが厳しくて……一日伸ばすことは可能ですか?」と迷惑を掛けないよう念のため確認し、頑張って最初の希望日に提出します。ただただ“速くやってくれる人”では終わりたくないんです。きちんと先方と自分の予定を確認して「忙しい中、こんなに速く描いてくれた」ってサプライズで喜ばせたい。 img02
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3年後、5年後の未来は誰かと暮らしていたいですね。結婚して、子どもを産んで。そして子どもが大きくなって落ち着いたときにも、今の仕事をしていたい。そのために今、頑張っている感じです。私にとってイラストレーターになれたことが夢のようなことなので。
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インスタグラムのDMでよく質問をもらうんです。「どうやったらイラストレーターになれる?」って。その時は「なれるさ!」って伝えます。まず少しでも多くの人の目に触れられるように、インスタではハッシュタグをむやみやたらに付けてみたらどうだ!って。初めからオリジナルを描かなくてもいい。初めは真似事でいいじゃない。真似しきれなくなったときに、自分のテイストや味が出てくるからって。
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あとはいつか自分のブランドを立ち上げてみたいですね。アパレルでも小物でもなんでも。「これ私のブランドなんですよ」ってかっこいい。

将来のためにもいろんな人と直接会って、イラストだけじゃなく私自身のことも知ってもらって、この仕事を続けていきたいです。これからもイラストで夢を叶えていきたいから。
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南 夏希

NATSUKI MINAMI
1987年奈良県生まれ・神奈川県在住。イラストレーター。大学卒業後、旅行会社で法人営業を担当し3年で退職。アパレル、コーヒーショップでアルバイトをしながらアートスクールに通う中、毎日イラストをインスタグラムに投稿。イラストレーターとして活動を始め、ファッション、雑誌、カフェ、WEB、書籍など多方面で活躍。
instagram online
テキスト:竹本紗梨  フォト:雨森希紀(Maran.Don)
デザイン:前田佳保里 編集:丸山央里絵