美味しいお茶を淹れる生活を気軽に愉しんでもらいたくて

パートナーのベトナム赴任に帯同中、希少な野⽣茶に出合い、帰国後に⼀⼈でオンラインストアを開店。会社員だった彼⼥に、ベトナムのお茶に惹かれ、茶葉とお茶を愉しむための茶器を提案するストアをつくることになったストーリーを語ってもらいました。

img02
2014 年に夫のベトナム転勤が決まり、会社を退職しました。それまでヨーロッパばかり旅していてベトナムには⾏ったことがなく、「全然知らないところに住むってどんな感じだろう?」という興味もあって。でも楽しみというよりは治安への不安が⼤きかったですね。

引っ越してからは当時、毎朝の楽しみだったコーヒーを求めてローカルのお店を探索。でもベトナムのコーヒーはブラックだと私には少し苦くて。お茶だったらおいしく飲めるんじゃないかってお茶屋さんを探し始めました。
img01_1
そこで出合ったのが、ベトナム⼭岳地帯でお茶を伝統的な技法で作っている『HATVALA(ハトヴァラ)』でした。会社員時代は多忙で、茶葉をいただいても消費期限を切らしていたような⾃分がその時、お茶を淹れて「⾊がきれい、⾹りに癒される、そしておいしい…」って味わえるようになりました。
img01_1
『HATVALA』は北部⼭岳地帯出⾝のNgoc(ゴック)という⼥性とイギリス⼈男性の2 ⼈が設⽴したベトナムシングルオリジンティーのブランド。ホーチミンに店舗があり、⼭岳地帯出⾝のゴックさんが⾃ら⾜を運んで農家と直接取引をしていて、その稀少な個性を楽しむ⼈が集まるお店でした。そして通ううちに同年代のゴックさんと仲良くなってよく話をするようになったんです。

その頃から私⾃⾝、住んでみて観光では⾒えないベトナムの⾯⽩さを感じていました。樹齢100 年の野⽣のお茶の⽊で育つ茶葉や、スパイスやカカオなども⽣産していて⼟壌が豊かなこと。⾃国の農作物で新しい⾵が起きていること。経済成⻑している国特有のポジティブな空気や⼀体感。帰国したらそんなベトナムの良さを伝えたいと考え始めていました。
img01_1
そして2 年弱で帰国することに。⽇本でも飲みたいと、いつものお店で⽇本にお茶を届けてもらう相談をしていたら、いつの間にか私が輸⼊販売するという話に(笑)。⾃然な流れでお茶の販売準備を始めることになりました。
img02
茶葉を商⽤輸⼊するに当たっての⼿続きは、とにかく⼤変で果てしなかったです。そもそも⼿続きに資格がいるのか、専⾨の会社に依頼すべきなのか、⼀つ⼀つ検索しました。
⻑くやっていくためにも⾝の丈に合わせて、⾃分でできることは⾃分でやる。輸⼊機関に⼿順を確認し、不備のないよう何度も書類を持って通い詰め、厚⽣労働省の⾷品検疫を通して許可をもらいました。本当に⼤変だったけど、輸⼊の仕組みが分かり⾃信になりました
img02_01
仕事には、会社員時代の経験が⽣きています。最初に勤めた外資系の写真会社で、海外の商品をそのまま販売PR するのではなく、⽇本向けの魅⼒をずっと考えていたこと。次のメディア企業で営業企画の仕事をしていたこと。おかげでお茶を誰に届けたいのか、どういう販路がいいのかなど道筋を⽴てて考えられるようになったかなと思っています。会社員をやっていて本当によかった。
img01
帰国から半年で、オンラインストアをひっそりオープン。「ベトナムのリーフタイプの茶葉」はなじみが薄く、ニッチでどう飲めばいいか分かりにくいイメージを持たれかねないと思い、⾃分の屋号『unithé(ウニテ)』を⽴ち上げ、使いやすい茶器とともに、気軽にお茶を愉しむ⽣活そのものを提案することにしました。
img01
取り扱うお茶は『HATVALA』のみ。ベトナムのお茶に馴染みがなくても、アールグレイなど馴染みある茶葉を扱っているので、普段の⽣活で飲んでもらいたい。気分が替わってリフレッシュできる、印象に残る。そんな気持ちや時間を届けたいと思っています。

私でも続く気軽な淹れ⽅を考え、茶⽸やポットのツール類も提供しています。取り扱うポットは2 層型。熱湯を⼊れると、上の容器で茶葉を蒸らす状態に。ボタンを押すと、下の容器にお茶だけジャーっと注がれます。それが楽しい!
ガラス製なので、⾊の変化や茶葉が動く様⼦まで⾒える。お茶を淹れる段階で楽しいって思えたのは初めてでした。⾊を楽しんで、⾹りを楽しんで、味を楽しむ。⼤切な要素です。
マルチティーポットの使い方
img01
開業資⾦は⾃分に⽤意できる範囲で。通販ページはネット上のサービスで無料制作。あとは思いがけずイベントや百貨店の催事に声を掛けていただいて、リーフレットを作らなきゃ。お茶の淹れ⽅もよく聞かれるのでまとめておかなくちゃ。そのたびに⾃分で写真を撮り、デザインを勉強して販促ツールを作っています。
img01
ただ予算も限られているので「それ本当に必要だっけ?」と都度、⾃分に問いかけながら。物を⽤意すると確かに安⼼しますが、⼤事なのは「何がしたいか」「どうありたいか」。よく考えた上で必要なら、準備します。
img01

img01
⼀番にこの仕事が⻑く続くといいなと思っています。⼭奥のため機械も⼊れずお茶は全部⼿摘み。伝統的な⼯程を⼤事にしながら、限られた収穫量を、⼿間をかけて育てている。それを続けていくために、私は“届ける”という役割なのかなって。
誰かに届けることで彼らは⽣産し続けられる。“⽀援”ではなく“循環”なんです。良い循環ができるよう、きちんとしたルートを通じ私は⽇本で届け続けたいです。
img01
去年はジャスミンの花のブレンダーのマダムに会いにハノイへ⾏きました。所有するガーデンで育てた花が開く直前につぼみを摘み、⽤意された茶葉にブレンド。すると窯の中で花が開いて、⼀晩かけて茶葉に⾹りが付く。「⾃分で育てた花の⾹りが移ると嬉しい」とおっしゃる話と、お客様がジャスミンティーを「いい⾹りですね」と⾔ってくださることとがつながって、腑に落ちて。

私のモチベーションの源泉は好奇⼼なんです。これからも好奇⼼のアンテナを⼤切に、ベトナムの魅⼒を発⾒していきたい。そしてそれを『unithé』を通して伝えていきたいと思っています。
img01

img01

武⾕朋⼦

TOMOKO TAKETANI
1980年埼玉県生まれ・東京都在住。外資企業を経て、メディア企業勤務。2014 年に退職し、パートナーの転勤でベトナム・ホーチミンへ。2016 年に帰国し、“おいしい茶葉をもっと⼿軽に⾃由に楽しむ”をテーマに、シングルオリジンティーとお茶の道具を扱うブランド『unithé(ウニテ)』を⽴ち上げる。百貨店等多くの催事出店を通してお茶の魅⼒を届けている。
instagram online
テキスト:竹本紗梨  フォト:雨森希紀(Maran.Don)
デザイン:前田佳保里 編集:丸山央里絵